【MASA編】
奥武蔵の雨から追われるように岩蔵方面の山へ逃げ込んだ。ここなら小雨もしのげるか。厚い雲を仰ぎながら青い隙間を探した。街に戻るのは嫌だった。我らはピークから緩やかなスロープに乗り、森の傘に守られゆらりと走る。また登り返すうち、雨にさらされた草木がみずみずしく映る。「昨日は暑かったから、ひんやりして嬉しい」とでも言っているよう。終いには我らも露に浸るが、思いがけず知らぬ山道に巡り会えた。まるで誰かに招待されたかのよう。長澤の裏参道は懐深きもの。濡れてさえも、爽やかな心持ちにしてくれた。MASA